不妊治療が保険適用されることの狙いは?
菅さんが首相になって、いろいろと目玉政策を打ち出している。その一つが不妊治療の保険適用だと思う。
保険医療を極力減らしたい政策でここ何十年と進めてきたはずだけど、生殖医療の分野で保険適用の範囲を拡大させていくということか。
news.yahoo.co.jpここでも触れているように、保険適用させることの大きな目的の一つには少子化に歯止めをかけたいという思いがあるのだろう。
この記事の試算によればこの政策で増える出生数は2-3万人だとのこと。これを多いと思うか少ないと思うかは別として。
現状では不妊治療に対して全く保険適用されてないのか?というとそういうわけでもないものの、いわゆる体外受精とか顕微受精とかは全くの自費でしかも超高額。
体外受精や人工授精、顕微受精をトライしたいカップルにとっては本当にありがたい政策だろうと思う。
ただ、この先に妊娠したらばもちろん妊娠は保険適用外。
保険を適用するかどうかは、「病気かどうか」だと誰かから聞いたけど、「妊娠、出産は病気じゃないから保険適用じゃないのよ」と説明されて、そんなもんか。子どもを産むって大変だな。と思ったことがある。
不妊は病気という扱いになるのかな。高齢で妊娠しにくくなった場合、それも病気という扱いで保険適用されていくのか。
どういう風に診療報酬改定をするのかわからないので行く末を見守りたい。
もしもこの政策が少子化対策なのだとすれば、不妊治療だけに注力してもあまり意味や効果はないのではないかと思う。
例えば日本の中絶件数は減ってはいるものの、約3年前で17万人弱が堕胎で命を落としている。
少子化を解消したいのだとすれば、中絶を選択せざるを得ない人が、「産んで子どもを育てる人に託す」とか「産んで育てる環境を整える」といったことも同時に進めていくべきだし、さらに里親や養子縁組といったことに対してももっと多様性を打ち出していくべきではないかと思う。
単に、里親の裾野を広げればいいということじゃなくて里親に対するペアレンティングの学びの機会であったり、必要に応じてはレスパイトできる政策であったり。これは里親に限らずあっていいと思うけど。
何かで読んだけど、日本は昔から子どもに対してものすごく冷たい社会で、江戸時代以前からそうらしい。
堕胎率だってずいぶん減ったけど、昭和30年代とかはもっともっとカジュアルに堕胎されていたらしいし。
そのことを思うと少子化政策で子どもを大事に産み育てるという慣習が日本文化にはあまりないのかもしれないな、とも思うけど、それがいいこととは思えない。
不妊治療を保険適用されることと同時に、夫婦のあり方(異性同士の結婚だけを結婚とするので良いのか)、家族のあり方(ステップファミリーや自分の子どもと里子など)、子育てをする社会環境、経済的なサポート(単に金をばらまけってことじゃなく、学費や給付型奨学金のことなど)など「子どもが生まれて大人になるまで安心して育てられる」という枠組みを作るのが政治の仕事ではないか?と思う。
私がここ何年も、20年くらい政治に怒りを覚える理由の一つに、政策に大きなビジョンが見えないから。
特に子育て政策は未来に向かうものだから限定的に「妊娠」とか「保育園」とかだけで解消するものではない。じゃあ、この国の未来にどういう社会を子どもに残したいのか、どういう社会を志向するのか、そういうものがとても現れるはずだと思う。
なのに、それが全然見えないし語られない。
この政策が貴重な一歩だとして、踏み出した後にそのカップルがどんな風に安心を享受しながら子どもと生きていけるのか。そこまで描いて欲しいなと思う。