子どもと暮らす日々のブログ

病院で働きながら子どもと生活する日々を書いています。

【読書録】希望荘

宮部みゆきさんの本を久しぶりに手に取る。

結構な厚みの本で、長編小説だと心構えていた。実際には駆け出しの探偵・三郎さんが主人公で、三郎さんの扱う事件が一冊の本にまとめられている。

どの物語も甲乙つけるものでもなく面白いのだけど、印象深かったのは最初の母娘の出てくる話。

娘と暮らすアパートから逃げるように出てきたおばあさんが、ある日行方不明になって...。

些細な手がかりをもとに探して、最後は探し当てるのだけど、宗教(っぽいもの)にハマる心のスキとかちょっとした虚栄心とか下心そういうものがすごく繊細に描かれていた。

宮部みゆきさんというと、ミステリーとか推理作家とかそういうイメージだけどシリアスすぎないのがとても良い。

わりとこうしたミステリーものはテレビでも本でも好きなのだけど、あまりシリアスすぎるとちょっと息が詰まってしまう。別に笑いが混ざればいいものでもなく、登場人物の人間性が香ってくるくらいがいい。

そういうのって言葉で表現することって難しいだろうと思うけど、小説家はそういう描写が本当に素晴らしくて、「ああ、宮部みゆきを読んで良かった」となんだか思った。

名前もすごくいい。希望荘って。

大家さんのキャラクターとか人柄が、アパートにつけられたこの名前に凝縮されている。

今は違う作家の小説を読んでいるけど、また読もう。

希望荘