仕事のときにはいくつか必要とされる能力があるけど、「捉える」という力は結構重要なものの一つだと思う。とくに私のような相談援助職と言われる仕事は会って数秒〜数分で把握すべきポイントが自分の中に複数入ってこないようではあまりセンスはないのではないか、と思う。
会って話す事が多いから情報量は多い。
私の場合は持ち物、服、声のトーン、言葉遣いで大雑把なところを把握して徐々に会話を重ねて、相手なりの人間関係の築き方を分析していく。
まあ、意識して対応することもあればバタバタと挨拶だけしてあんまり細かなことを考えないこともある。こうしなくちゃというものはそんなにないから。
ただ、大事なのは自分なりに「この人はこう、ああだ」と捉えたものはあくまで私の中の印象であり、そこには何の色もない、ということだと思っている。
たとえば身なりがあまりきれいじゃないとか、言葉遣いが悪いとか、そういうこともあるけど、どんな仕事なんだろう、職場から駆けつけたのかなとかそういうことは考えるけど「良い悪い」みたいなことはほぼ思わない。
ほぼ、というのは「ああ、この人は家族とあまりいい関係じゃないかも」という程度のことは思う。
以前に細かくて細かくて、書類も1行ごとにつかえてしまい、全部質問するような家族がいた。そういう人も不安の裏返しだし、ただただ丁寧に説明していくしかない。不安なものは一つ一つオセロをひっくり返すように安心に変えていくしかない。
とある患者さんのことでカンファレンスをしていた時に、若手の主治医が「あの手の人は要求がエスカレートするんで!」と面倒くさそうに言っていた。面倒くさいと思っているその心は患者さんに伝わっている。
単純に「不安が募りやすい人である」ということだけで十分であり、それに対して「不安を和らげるには」ということは考えるべきだけど、面倒くさいから逃げたいと思ってしまうのであれば、それは言葉以上に相手に伝わる。
社会福祉士の勉強の中で「非審判的態度」というのを面接の態度として重要であることを習う。その重要性は自分が支援の軸をぶらさないために、自分がきちんと相手に向かい合うために必要な態度。
こうした能力というか技術というかセンスって、別に仕事の場面に限らずとても大事だなと思う。
相手を捉えて受け止める。
これができないと、なかなかどんな仕事をしていてもきっと苦労するんだろうな。