つい最近までパン屋さんになる夢一本だった娘に、「本屋さんや時々本を書く人になる」という高尚な夢が追加された。
高尚っていうのは、本というものに私が一定以上の価値を見出しているから。その夢、私も一緒に見たい。
そう思うほど、憧れる夢。本屋さんを開いて時々、物語を創作して。
世の中で、お金のことも何も考えずに自由に生活できるとしたらやってみたい仕事の一つだ。
出版社に勤めていた頃、職場がお茶の水だったから時々神田の古書店街とか散歩に出歩いていたけど、理想はああいう感じの特定のジャンルにこだわった本屋さん。ここにいけば、このジャンルの本があるんだよねってみんなに思ってもらえるような。
じゃあ、何?ってなって今咄嗟に思いついたのは哲学系。
最近読まれる哲学本というかは、サルトルもカントもキェルケゴールもプラトンもアリストテレスもアウグスティヌスもデリダもハンナ・アーレントも、なんでもあるっていう感じの本屋がいい。
稼ぐとか労働に捉われないで好きに突き進めるのであればそういう本をいっぱい揃えて満足して本に囲まれて生きてみたい。
でもきっと、飽きちゃうから時々近隣の本屋さんで重松清の小説とか買っては読んで泣いちゃうんだろうな。
そして、人の心って単純で脆くて矛盾だらけだっていう下手な小説を書いてみたり。誰に読ませるでもないものなのか、強いメッセージを込めるのか想像もまだつかないけれど。
娘みたいにパン屋さんも本屋さんも小説家も目指すっていうのもすごく素敵。
パン屋と本屋は相性も良さそうだし。
人の夢に乗っかってしまった。この現実世界を思うと「手に職だ!うぉー」ってなりそうだけど、夢はそういうことじゃなくて好きだって思えることの延長だよなぁ。
私自身がそれで出版社で働けたのだから、好きって大事。
結果的には全然違う職種と仕事に今落ち着いたけど、パラレルな世界があるなら娘の描くような、好きな本にまつわる仕事っていいなって思う。
それを本業にしてた時は、好きなことだけを追いかけられないし、締切に追われてしまっていたけど、紙や本に囲まれた環境は楽しかったな。
私は途中から書くことを専門にしてたけど、文字が降りてこないときは職場の本を無造作に読み漁ったり。
夢の話に戻って。娘が言葉の豊かさや面白さに今出会っているとしたら、とても貴重な時間だな、なんて思う。