おそらく初めて長嶋有さんの本を読んだ。というか、ずっと女性だと思っていた。読み終わって調べていて初めて男性だと知った。
作家って非常に匿名性が高いというか、不思議。
この作家は男、とか女、とか気にせず読むと男女の差なんて全然感じない。名前だけ見てて「男だ」「女だ」と思い込んでいる人もきっといるんだろうな。恩田陸もずっと男性だと思っていたし。
どっちでもいい。
良い本であることが全てなのかも。
そしてこの本。
アパートの一室を巡って、いろんな人が借りては出ていき、また次の住人が住む。
この本の面白いなと思うところは主人公が部屋ってこと。主人公っていうのかな。主物公?そんな言葉聞いたことないけど。
とにかく、主体は部屋。
だけど、部屋は人に借りてもらうことで物語の中に存在していて、人と家は微妙な関係にあるんだなと思った。
今住んでいる家は前に高齢の女性が住んでいたらしい。
理由は深く知らないけど、家族が早く家を売りたがってたのかな、と母は言っていた。何度かお見かけしたこともあったらしい。
入居前、ほぼ廃墟と化していた今の家は、この集合住宅ができた当初のままの台所、電気のスイッチ、浴室だった。
エアコンだけは新品で、使わせていただくことにしたけど、そのほかはフルリノベした。
間取りも壁も天井も全然違うものになってしまったけど、この本を読んで、「前の住民」の気配や暮らしの余韻を感じながら新しい生活を始める賃貸アパートの妙みたいなものに気付かされ、時代と共に部分的に少しずつ手入れをしながら暮らしていくってとても味わい深いなと思った。
本の中では60年代〜70年代、80年代と様々な時代に生きた人たちの様子が描かれていたけど、当時流行ってたテレビとか音楽とか、そんな話題も取り入れられてて「そういうのあったな〜」なんて懐かしさもあり。
物件を見たり間取りを見るのはすごく好きだけど、こうやってそこに住む人、住んでた人に想像を馳せるとさらに興味深くなる。
また、長嶋さんの本を読んでみよう。