子どもと暮らす日々のブログ

病院で働きながら子どもと生活する日々を書いています。

【読書録】刑期なき殺人犯

少し前に読了しているのだけど、読んだ本はこれ。

刑期なき殺人犯――司法精神病院の「塀の中」で (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズIV-3)

非常に読み応えのある本だった。

最近、サイコパスに関心があり、そうした本を探している中で出会った本だった。

ノンフィクションで舞台はアメリカ。

ディテールは忘れてしまったけど比較的裕福とも言えるアメリカ人夫婦の間に生まれた末息子がこの本の主役だ。

夫婦ともに子どもの愛し方のわからない夫婦だったようで、幼い子どもへの扱いは非常に「無関心」だったのだろう。精一杯やっても、他者からは無関心に見えるというか。父親に至ってはおそらく「自分の子どもに関わらねばならない」という動物的な概念すらもどこかに置いてきてしまっていたのかもしれない。

 

そう思えるようなエビソードには枚挙にいとまがない。そうした両親に対して子どもたちがどれだけ苦悩し、葛藤し、もがいたか。

その結果として子どもたちを一時的にでも精神病院に入院させるという形で親の責任のかけらを果たそうとしていた母親の姿が垣間見える。正確には責任なんてものはかけらもなく「大変だからどこかへ」と言うものだったようにも思えたけれど。

 

ともかく、そうした幼少期を過ごした息子が犯した犯罪はあまりにもその瞬間冷徹だったし残酷なものだった。

それでも司法の場で裁かれる前に精神鑑定で精神疾患ありと言うことで犯罪者の入る司法精神病院に入院させられたブライアンは、なんと27年もそこにいるという。精神疾患のある犯罪者に人権はないと言わんばかりの扱い。訴訟王国と言われるアメリカで、自由と正義こそを国是とするようなアメリカで目に余る不正が行われていて、アメリカの現実を見た気がした。

 

日本も精神病院の入院の長期化が問題にされて久しいけれどアメリカにおいても治外法権的に入院が長期化していることはあるのだなということも知らなかったし、では日本ではこうした医療機関がどこかあるのかしら(司法精神病院みたいなところ)ということも気になった。

 

犯した罪の重さはあるとしても、ブライアンの場合には同情すべき余地も多分にあるし、私はこの本のタイトル「刑期なき殺人犯」については、ブライアンに殺された両親に向けた言葉かなと思っていたくらいだ。段々に、ああそうか、殺してしまったブライアン(加害者)を表しているのか、と思ったけど、あんな両親に育てられなければもっとブライアンの人生は違ったものであっただろう。

そう思うと、ブライアンの人生を破壊し、他の兄弟の人生を狂わせたのは両親だし、たとえ直接手を下さなかったとしても言葉で、体罰で、態度で子どもたちの心を壊し尽くした両親の罪もまた重いのではないかなどと考えた。

 

ブライアンが大手を振ってアメリカ社会に戻れる日が来るのだろうか。犯した罪は十分に償ったのではないか。

そろそろ、実社会の中で「好きに過ごす自由」を持てないものなのかな。

 

精神とか心理とか、もう少しこういうテーマで色々読書していきたい。