【読書録】不良少年とキリスト
初・坂口安吾。
座談会やエッセイのようなものをまとめた本だった。
1946年に書いたものが中心のようで、戦争が終わってまもなくの空気感の中で書かれたそれは、今の文壇に坂口が生きてたらなんと言っただろうかと何度も思わされた。
特に、座談会では志賀直哉をこき下ろしていたり、川端康成をつまらなさそうに論じてたり。
言いたい放題すぎるけど、今の作家たちもああいった座談会をして世に出たりしているのだろうか。私が文学論とか文壇の話題に疎いからわからないけど、かなり竹を割ったようにスパッとズバッと批判していて、それはそれで新鮮だった。
無論、坂口安吾が全てでもないのだけど、この時代の人たちの読書量とか読んだ上での感想の抱き方とか、ネット時代にはない鋭さがあるなぁと思った。ネット時代ってどうも玉虫色になりがち。あっちもこっちも立てたがる。
かと思うと、言い切って突き放す物言いをする人ほど根拠に乏しかったりして、ただの無責任な放談に終わりがち。
不良少年とキリストというテーマに惹かれて読み始めたものの、このタイトルのエッセイで私にはいまいち「キリスト」も「不良少年」も感じ取れなかったので、今度は太宰治とか坂口安吾の小説もたっぷりと読もうと思う。
特に、坂口安吾の太宰への想いは恋にも似たような、愛のような憧れのような、あらゆる思いが詰まっていそうな何かを感じてしまった。
冒頭に収められている「復員」は読後感の広がる、こだまのするような心に残る小説だった。