ベイのこと
ベイブレード自体、半年前はおろか3ヶ月前には存在も知らなかった。
大事な友人が2年越しで海外に飛び立つことになり、もう会えないかもしれないということで急遽、会うことになった。
「子どもの服とかいろいろあげるよ」と言われて空のスーツケースをがらがら引いて友人との待ち合わせに向かった。
友人も紙袋いっぱいに服やら何やらを詰め込んでくれていて、どれもこれもお宝の山だった。
「これ、きっと息子くん好きだと思うよ。うちもずーっとずーっと大事に遊んでたんだ」。
そう言われて宝の山の中にあった手提げ袋の中にあったのは、山ほどのベイブレードだった。
遊び方がよくわからない息子は早速友人の息子さんにグイグイと聞きまくって、遊び方を習得していた。
友人の息子さんは極度に人見知りだけど、息子の勢い(圧)とベイのおかげでお別れする頃にはすっかり頼もしいお兄さんになっていた。
おもちゃは子どもをつなぐ。
家に帰ったあとも、ずっと毎日ベイで遊んでいる。
組み合わせを自由に変えたり、きれいな色合いに嬌声をあげて喜んでいる。
今まで全然気づかなかったけど、雨の日も晴れた日もマンションのエントランスで男の子たちが黙々と回していたのはベイブレードだったんだ、と今さらながらに気づく。
うちの父親などが見たら、コマを紐で回さんのか!と驚くだろう。今どきの男の子を鷲掴みにする、令和版のコマは、カラフルでよく回って、かっこいい。