子どもと暮らす日々のブログ

病院で働きながら子どもと生活する日々を書いています。

【読書録】大不平等

大不平等――エレファントカーブが予測する未来

ふと、up to dateな話題にも触れたいと思って読んだのが、この経済本。自分の頭の悪さの壁にぶつかるような難しい箇所もたくさんあったけど、「大筋を理解しよう」「細かい事の理解は無理でも」と思いながら読んで読了できた。

この本が伝えたかったこととは違うだろうけど、この本を読んでしみじみと思ったのは、経済本も新しいものに触れないとだめだということ。たとえば、リーマンショック前に書かれた本はその後の未来を正しくは予測できていない。

古く読みつがれている経済の古典は歴史の何百年とか千年単位でいくつもの要素を分析してカテゴライズして、それで統計学的に科学的に論考しているからこそ、古びない部分もあるのだろうけれど、それでも「300年前はそういうふうに考えることができたけどもね」という部分も往々にしてあるのだろうと思う。

 

この本の主題とも言えるエレファントカーブって聞いたことがあったけど、詳しくは知らなかった。相変わらず、「何?」って聞かれてもうまく答えることはできないし、もう一度、もう何度か読まないと私の頭には入りそうにもないけれど、とにかく様々な国で、時代でこのエレファントカーブが描かれている。

ジニ係数のことも、もう少しきちんと理解していたい。

 

で、肝心の「大不平等」、つまり経済格差は今後どうなるのかという話だけど、筆者は「広がっていくだろう」と予測していた。私もそういう気がしてならない。

この本でも触れられていたけど、先進国内のGDPが全然成長しておらず、むしろカーブは途上国のほうがきれいに描けている。

アフリカや南米などその上下を繰り返している地域もいまだに多くあるけれど、それでも昔に比べてずいぶんとそうした地域の国々も経済的に成長していたり沈み込みすぎないようになってきているらしい。

そして先進国内ではごく一部の富裕層が超富裕層になって国内の資産の数割を締めていて、そのほか大勢の貧困層という図。

いまや中間層なんていうのも、いていないようなものなのかもしれない。

 

この本を読んで思ったのは、自分の仕事をしていく上でも、こうした経済知識をもっていることはすごく大事だということ。

税金を高くして貧困層に還元をしていくことが社会の望ましい姿だとしても、移民の問題や海外移住の問題(たとえば日本人が国内で学び、そこに税金も投資されているけれど、外国で働けばその就労所得に対する税金はその国で通常納められる。”投資”した日本としては損よね、という話)など、グローバル社会ゆえの悩ましさがある。

じゃあ、移民には冷たく社会保障をしなくていいかというと、そんな単純な話ではない。

 

普段、目の前の患者さんという非常にミクロな課題のミクロな問題解決に頭を使っているんだけども、この時代とこの社会、世界に生きている限りは経済のトレンドも価値観もマクロレベルで知っているべきだなと思ったし、経済の視点から福祉を見つめることもできて、こうした本で思考を促してくれるのは、とても刺激になった。

 

経済格差の避けられない世界の中で、貧困と富裕を包摂する世界とはどんな世界なのか、グローバル社会の中で各国は国民をどう定義するのか...ますます知恵が必要とされている。