シクラメンとクリスマス
小さい頃のことを思い出すと、わりと辛辣な母と父のやり取りを思い出す。
幼いながらに父のことを少し不憫に思ったこともある。
たとえばシクラメン。
毎年、この季節になるとクリスマスの挨拶と称して父の兄弟からシクラメンが贈られてきた。
最初に贈られてきたのは私が幼稚園だったか1年生だったか。赤ちゃんの頃にはなかった気がする。
父の兄弟が結婚してしばらくしてからのことだったように思う。
届くようになった最初の1−2年はブツブツと文句を言いながら、シクラメンを飾っていた。ただ、鉢植えで届くシクラメンは水やりや光の管理など細かい対応をするのは難しくて母はすごく嫌がっていた。
「今年はお花贈っていただかなくていいですよ」という主旨のことを父を通して先方に伝えていた。
はずが、毎年、毎年贈られてきた。それで母はある年「これ、嫌味かよ!!何なんだよ。毎年いらないっていうのに贈ってきて!」と父に対しても怒り心頭だった。
シクラメンは贈られて来なくなって代わりにポインセチアが贈られるようになったあたりから「そういうことじゃねぇから!!!!」という母の心の叫びはぶつけようもないストレスに変わっていったと思う。
そのうち、私も実家に届くそうした風物詩に気を留める余裕もなく、いつしか届かなくなっていた。
贈り物については本当に難しいし大変だな。
それが私の心に染み付いている。
花って贈られて嬉しいものなのか、というのもこの経験があって以来、考えさせられているし「みんなが嬉しい」という前提はないと思っている。
たとえ花が嫌いじゃなくても「その花はちょっと...」なんてこともある。
会社が送別で贈るような花はまだしも、個人で渡す花はその人の趣味まで知り尽くしていないと難しい。
母みたいな人のほうが少ないのかもしれないけど、母の怒りはなかなかのものだった。
贈ってきた人たちがあまり好きじゃないっていうのもあるのかもしれないけど。
父も母のぶつける大概の怒りを吸収するスポンジみたいな人で、怒鳴り返したりしないから我が家は大きな問題にもならなかった。
これが私の幼少期に刷り込まれたクリスマスの教訓。