子どもと暮らす日々のブログ

病院で働きながら子どもと生活する日々を書いています。

【読書録】あなたにつながる記憶のすべて

小手鞠るいさんの名前は図書館の本棚で何度も見かけていた。

勝手に「20代くらいの女性かな」と考えていて、手に取ることもなく過ぎていたけど、ふと先日借りてみようと思って初めて読んでみた。

どこまでがフィクションでどこからが本当かわからないけど、私小説的というか自伝かなと思うような、だけど一つの物語として完結していて不思議な気持ちになっていた。

テーマは「死」そして「記憶」。

 

私にも、もう会うこともないしどこにいるのかもわからないし、もしかしたらもうこの世にはいないかもしれない人との古い古い記憶や、亡くなったということを知りつつも、私の中ではまだ生きているような人が、そういえばいる。

 

生きていることにばかり目を向けすぎていて、亡くなりゆくもの、消えゆくものへの思いが普段はすごく下の方に沈められている。

 

生きている人や亡くなった人への喪失感とはなんだろう。

身体感覚として自分の一部になっているものであったり、その人が自分の中に残した記憶にある仕草、表情、ふとしたときの声...日常で気にも留めないものの集積が更新されていかないことにあるような気がする。

 

亡くなったということがすごく身近であればそれは喪失感としてものすごく迫ってくるし、遠い人であればなんとなく「まだ生きている」感じがして、自分の中でその人を勝手に動かしていたなぁと思う。

「おじいちゃんてこういうときには絶対こういう反応するだろうな」とか、「あのときの顔ってやっぱりこういうこと考えてたからだろうな」とか。

解釈したり、心のなかで蘇らせたり。

 

「生きる価値」とか「生きる意味」とかいろんな言い方で自分の存在意義を問うてくることがあるけれど、子どもを眺めていてしみじみ思う。

この子の姉を呼ぶ声や、弟のために靴下を選んであげる姿や、日常の流れていくすべてが、生きていることだし、人は人の中で生きているのだからそれだけで十分に意味も価値もある、と。

この本の伝えたいこととは少し違うかもしれないけど、本を読みながらそんなことを考えた。

12歳の少年(詩人)の話が出てくるのだけど、実在の人かな。詩に迫りくるものがあった。

あなたにつながる記憶のすべて