最近は読んだことのない作家の本を読むようにしていて、今回の青山さんも初めて読んだ気がする。
この間まで読んでいたカズオ・イシグロが海外を舞台に物語が編まれていたのに対して、『私の家』は日本のとても平均的な家族の、そこかしこに見ることができるような日常の様子を丁寧に描いていて、一見すると平坦にも見えるのにたしかにそこに一人ひとりの人生や生活や、生きてきた跡がある。
そしてこの小説のタイトルどおり「家」というものの存在と、そこに暮らす人や暮らしてきた人の道筋や存在を浮き立たせている。
あまりきちんと家について考えたことがなかったなぁと思うし、小さい頃に住んでいた家はもうない。正確に言うと、もう私(たち)の家ではない。
おとなになって実家ごとから引っ越したから、以前住んでいた家は誰かのものになっていて、今の実家は毎日のように通える生活圏内にある。
そうすると、降り積もるほどの懐かしさはなかったり逆を言えば喪失感もない。
家のない生活を想像もしたことがないというか、家は仕事以上になくてはならないもの、という認識が自分の中にどこかあったけど、単に箱だけのことを指すのが家ではなくてそこにある暮らしもひっくるめて人は家を家と認識しているのかもしれない。
本を読んでそんなことを思った。
あと、登場人物のお母さんの放つ「てぇ!」がすごく気になったし好き。