【読書録】私の家では何も起こらない
表紙の可愛さに惹かれて手に取った。
恩田さんのことを、その昔ずっと男性だと思っていて、ある日テレビで特集されているのを見た時に女性だったことを知った。あれから多分10年以上は経っている。なのに全然読む機会がなかった。
今回は表紙がとても秋や冬に向いていて、読みたいなと思った。
中の装丁もすごく可愛い。
この表紙絵のイメージのまま、本を読み進めていったらそこそこにホラーだった。
最初は短編集かなと思っていたらどうも「家」を軸にあれこれと登場人物が出てくる。
繋がりがあるような、ないような。「家」だけでつながっている感じ。
中盤の章が特に怖かった。折檻をされていた少女が親切な婦人に連れられ、屋敷に来るんだけど、そこでの生活が幸せなのか、どうか。
その家を生きて出ていった人がいたのかしら。なんて思わせるような内容。そういえば今年読んだ本に「三の隣は五号室」と言うのがあったけど、あれも家を軸にした本だった。
何かの暗示かしら。
似たような、だけど作風の全く違う本を1年の間に2冊も読むとは。それもそんな博覧強記でもないのに。
恩田さんの風のようなホラーがほんのり怖くて、だけど怖すぎなくて、なんだか心地よかった。
それに私の家も築50年で、この家に住んでいたのはおばあさんだと聞くけど、家を買う前に見せてもらった時、慌てて引っ越したかのように少しまだ残っているものもあって、コード類などあちこち垂れ下がっていた。
住むにはだいぶ手入れが必要だった。我が家はフルリノベしてしまったけど、元の家の構造とか残していたら、もっと前の住人の気配を感じていたかしら。亡くなってないからそんなことないか。
だけど、ここに誰かが住んでいて、この先どうなっていくのだろうかなど考えると不思議な気持ちになる。ちなみに実家の家は祖父母が住んでいて、その後に両親が住んでいるから誰の手に渡ったかが明白。
外国と違って最近の日本の住宅はここ50−60年のものが多いだろうし、さらにそういう家も取り壊したり立て直していて、古い家ってあるだろうけどもどれくらいあるものなんだろう。
ホラーな感じはともかくとしても、最初の章に出てきた女性の話はなんとなくわかる気がする。
古いけども手入れして、梁なんかもそのまま残して、風の音を聞きながら生活するってきっとそれはそれで充実感があるだろうなって。
新しい家はおしゃれだし、素敵だし、見るのも大好きだけど、この身の丈に合った感じの古い我が家は「私の家」って感じがする。
家のことを考える一冊となった。