子どもと暮らす日々のブログ

病院で働きながら子どもと生活する日々を書いています。

【読書録】福翁自伝

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言わずと知れた自伝本の名著、傑作。

親友のお子さんがお受験するということで福翁自伝について尋ねられて、「しばらく読んでなかったな」と思って読み直した。

つもりだったけど、私が読んだのは『学問のすゝめ』だった。

福翁自伝、初読み。

 

江戸末期から明治初期の時代が割と好きということもあって、それだけでも歴史本としても興味深く、面白く読んだ。

福沢が緒方洪庵に学んでいた頃は、まだ幕府もあって明治政府のない時代のこと。その頃に洋学をいち早く身につけて切磋琢磨しながら勉強していた若者たちがその後の日本を作ったのだなということをしみじみ思いながら読んでいた。

 

「お受験」を念頭にしながら読んでいたので、福沢自身の幼少期〜青年期の様子と、福沢自身が親として子どもにどういうふうに教育を施したかというあたりを気にしながら読んでいた。

 

読了後の一発目の感想は「こういう夫がいたら最高だな」ということ。

いいお父さん、素敵な夫だっただろうなと思う。文章自体ももちろん、明治時代のそれで現代風な言い回しではないし、自伝だから多少欲目に書いている部分もあるのだろうけども、真ん中の芯が歪んでいないというか、ものすごく心の奥底から愛情がまっすぐ出ている人だったんだろうなということを感じさせられた。

 

女は一歩下がってとか、一家の主は迎え入れられるもの、とかそういう価値観を一切持っていない。

合理的で平等で、子どもたちに男だからとか女だからといった区別なく、別け隔てなくみんなをかわいがっていたし、手をあげたことなど一度もないという。

自身も幼少時代に、好きな勉強をとことんしていたし、親から何かを強要されたこともそんなになさそうな感じ。見守り型の教育だったのだろうと思う。

世の中すべての親が読むべきだと思う。

 

社会にも大いに貢献したし、家族のことも守って愛して、奥さんにもそうで。理想の父であり夫。

慶應義塾の学生に対しても敬礼とか時間の無駄と斬って捨てて挨拶など無用としたという。学費も高額にとらず、学費はすべて教職員の所得にしたとある。学校の発展や環境整備のために使われたのは、卒業生からの寄付によるところが大きいらしい。慶應の寄付文化の由来も初めて理解できた。

 

卒業生が寄付したくなる気持ち、愛校心が芽生えるのも福沢の魅力を考えれば(そして最先端の学問を当時の学生は学んでいたことを考えると)わかる気がする。

 

今の慶應がどうかはともかく、福沢諭吉はやっぱり偉大な人だったということを再認識させられたし、尊敬の念しかない。

 

我が家はお受験なども縁遠いし、子どもたちがどんな進路をたどるかわからないけど、万が一にも子どもが大きくなって慶應に行きたいと思ったら大いに応援したいし、『福翁自伝』くらいは読んでから行ってほしい。想像以上に素敵な男性であることがよくわかって、今の時代にも通じる紳士な人だった。

 

1万円札が福沢諭吉でなくなるのは、なんて惜しいことだろう。5万円札かなんかができたらぜひ、諭吉さんにしてほしい。

理想の男性は?!と問われたら迷うことなく「福沢諭吉かな」と言ってしまいそうなほどに惚れ惚れした。

 

まさか100年の時を越えて中年のわたしが『福翁自伝』を通して「結婚したかった〜」なんて思うなんて、きっと福沢も考えてなかっただろう。