桐野夏生さんの本。
内容を知らずに読んだのだけど、どんどんと引き込まれていった。
主人公イオン。舞台は渋谷。なのだけどもしかして30年後くらいの日本だろうかと思う。道玄坂も宮益坂も確かにあって、公園村って代々木公園かなって感じもして。それに宮下公園かなと思う公園も冒頭に出てくる。
だけどそこに集う人たちの貧しさは現代には「まだ」ないような感じ。いや、もしかしたらあるのかもしれないけど。
イオンが自分の記憶の中の双子を探して地下の闇人たちと暮らす場面がすごく暗く、怖かった。
ネズミもカエルもなんでも食べる。
汚物も流れてくるような地下鉄の中の穴蔵みたいなところでの生活。
階級制になっているようで、平等な感じもあって。確かに闇は平等だね。光があれば影があってそこにはコントラストができるけど、闇の中では上も下も関係なく暗闇。
イオンが出会った少年が双子だったのか、どうか。
最終的には地上に戻るのだけど、最終章でイオンの幼少期のエピソードというか生い立ちの手がかりとなる話が出てくる。
色々と考えさせられた。
世の中にはいろんな家族がいて愛情の表し方も示し方も伝え方もさまざま。同じように伝えていても受け止める子どもだってさまざま。
ある家庭は愛情が薄く、ある家庭は愛情に厚いなんてこともあるだろう。
それがもしも均一に薄く広く人が複数の大人から愛情を受けたとしたら?少なくとも愛情に飢える子どもはいなくなるのかもしれない。
それに虐待されることも少なくなるかもしれない。
自分の子どもにも愛情を加減して他の子にも自分の子と同じくらいで接するなんてできるだろうか。たっぷりと甘えさせてあげたいと思っても、自分の子どもだけに対応するのはできないからって、平等に扱えるだろうか。ユートピアってそんな世界だったっけ?
でも世界のどこかではそういうコミューンやあるのかも。
最近話題の統一教会(旧)なんてそれに近いものがあるのかもしれない。
この本よりもずっと悪い(よこしまな考えに立っている)けど。
優しいおとな。私は子どもにとって優しいおとなだろうか。
なんていろんなことを考えてとっ散らかったままだけど、とても考えさせられたし、無関心と低体温だったはずのイオンが人との関わりと出会いを通して強く逞しく愛情深くなっていく姿など、人って生い立ちだけでは語れない、複雑で大きな生き物なんだと思った。