これは忘れもしない。大学時代、自分が社会人になれるとみじんも思っていなかった私は、軽くだけど本気で「大学院に行くのはありでしょうか」とゼミの教授に聞いたことがあった。
その時に教授が「あなたは社会に出た方がいいよ。大学は所詮モラトリアムだから」みたいなことをおっしゃった。
その一言で「ああ、私は大学院じゃない」と思った。大学院はある分野における学問的研究をする人のための場所であって私のように社会人になることを逃げている人のためのものではないのだから。
そんな当たり前のことに気付かされ、その日の午後にはリクルートのエントリーシートに登録をし始めていた。みんなよりも数ヶ月遅れて。
だから既に受けられない会社もいっぱいあった。
とりあえず、どこでもいいけど編集っていいな〜だって本好きだし。そう思っていた。
いいなって思った会社のいくつかは最終選考まで行けたものの、合格ができたのは小さな専門書籍の会社だった。
そこでは最初から編集長に超いびられていた。おばあちゃんだったな〜あの人。
あまりにもひどい物言いに見かねた部長が迅速に部署異動させてくれて、その後はのんびりのほほんと仕事していた。それが2年目になって産休に入る人の代打で新聞の記者部門に異動させられた。
何これ。天職。
本当に楽しかったし、編集も楽しかったけど自分が聞いたこと、調べたことを自分の言葉でまとめて世に出すなんてこんなに楽しい世界が世の中にあるんか!!!!という驚きと発見と充実。一生これで食べていけると思った。それくらい楽しんでいた。
なのにふと、組織に対しては冷めてしまう自分がいた。
どこを向いてこの団体は仕事しているんだろう?って。
若かったからかもしれないし、もっと違う世界を見たい気持ちもあった。その後、いくつかの職場を経験したけど外資系に行った時も、国内のIT大手に入ったときもどれもこれも楽しくて「ああ、ここで私は末長く頑張りたい」などと思っていた。
それが息子の生誕直後に会社の部門解散などがあって国家資格を取得したこともあって、今は病院勤めをしている。
縁とは妙なるもの。
今じゃこれが天職とばかりに楽しく働いている。
先日、同僚が「もう面倒臭くてつまらなくて」と今の仕事について話してくれた。それでやめてしまうとのこと。
そうか。
面倒だし楽しくないのか。
一日8時間も過ごす場所が楽しくないなんて、一大事だ。
私はこの上なく楽しい。
何がこれほどに楽しく思わせているのかわからない。大概の仕事を楽しむ価値観の持ち主といえばそうかもしれないし、とにかく仕事は大変で楽しい。
忙しくて大変で疲れるけど充実している。
だけどその人の話を聞いて思った。1日の終わりに「もう懲り懲り」というネガティブな思いが心を占めるようならやっぱりそこの場所、その仕事は向かないんじゃないかと。
私もこんな意地悪い病棟の看護師さん本当にやだ!と思ったこともあるけど、仕事自体は嫌になってなかった。仕事も嫌になったら辛いししんどい。
8時間働く場所は楽しく刺激的(良い意味で)な場所でないと続かないだろうな。