元夫は「尊敬しろ」とよく言っていた。
「夫に対する尊敬が足りない。尊敬されていると思えない」と。
尊敬か。
尊敬って立場や身分にするものなのか。なんとなく飲み込めないまま結局離婚してしまった。いまだに答えは出ない。
ふと、今の職場の医師たちについて「本当に尊敬する」って思うことが度々あって、今日もそんな気持ちになって仕事を終えての帰り道だった。
1日を振り返っているときに急に元夫の話を思い出して、尊敬ってなんだろうかと考えさせられた。
なんで私は先生を尊敬だわって思えるのに夫には思えなかったのだろう。
先生が医者だから尊敬?
それは違うなぁと思う。
以前働いてた病院では医師たちの老後のデイサービスと化していて職業倫理もギリギリ放棄。
もう誤診も当然かもねという状況でヒリヒリすることも日常茶飯事だった。当然、尊敬という感じとは違い、患者さんたち大丈夫かなという危機感を覚えることもあった。
じゃあ、なんで今の病院の先生たちを尊敬するって思えるのか。
先生方の日常も私生活も一切知らないし、そこで幻滅するかもしれないことは別として。医師たちの仕事の場面で一番私たち(MSW)が先生たちと関わるのがICのとき、もしくはカンファレンスだったりする。
特にICでは狼狽えたり、怒ったり、取り乱したり、冷めたり。いろんな心理状態の患者さんや家族に先生が病状説明を行う。
時には物音ひとつ立てられないセンシティブな空間になることもあるし、永遠に終わらない円盤の上を回っているかのようにぐるぐると終わりのない問答に巻き込まれることもある。
でも先生たちは絶対に逃げないし、絶対に諦めないし、絶対に向き合ってくれる。
これってすごいなと思うし、先生の胆力が試されているんだろうと思う。
今日もベテラン医、若手医師のICに同席したけどどっちの先生も「患者さんにとっての最善」を考えつつ、その話を受け止める家族の負担にも思いを馳せ、丁寧に言葉を選んで話していた。
普段そういうことを家族にしているかどうかは知らないけども、少なくとも仕事の場面でここまで細やかに適切に関わっていけるってすごいなぁと思うし、尊敬してしまう。
元夫も外ヅラはいい方だったけど、流石に責任をちゃんと請け負う胆力や言い訳をしない潔さもなかった。だから都合が悪いと全部相手のせい。
そんなやつだったな。
なんてどうでもいいことも思い出しながら。
やっぱり私にとって、尊敬ってその人の人間性に対して抱くものなんだよなぁという今の所の暫定的答え。